一般的な治療の流れ

蛋白漏出性腸症(または疑いあり)と診断された場合の一般的な治療の流れです。
その子の状態や獣医師の治療方針によって多少の前後はあるかと思いますが、概ねこのような形で進むようです。

 

1.除外診断

 

「低アルブミン血症」「低蛋白血症」の原因となる病気の検査を行います。
下痢や嘔吐の症状で受診し、血液検査を行った後に「低アルブミン血症」「低蛋白血症」が判明しているかと思います。 この時点で、肝臓や腎臓の数値も出ているので血液検査以外のもの、もしくは詳細な血液検査が行われます。
腎臓疾患の検査となる尿検査、肝臓疾患の検査となる総胆汁酸検査(血液検査)などが行われます。併せて、各臓器の状態を見る超音波検査やレントゲン検査なども行われます。
腎臓や肝臓、他の臓器に問題がないという結果になると「蛋白漏出性腸炎」の疑いあり、という診断がされます。

 

2.投薬・療法食

 

「蛋白漏出性腸炎」の疑いありとの診断がされると、 下痢・嘔吐等の症状の有り無しにもよりますが、まずは抗菌薬(メトロニダゾール等)、胃腸薬(下痢止、はきけ止め等)が処方されます。同時に療法食への切り替え(ロイヤルカナンやサイエンスダイエットの消化器サポート等)を行いなす。
ステロイド剤(プレドニゾロン等)は同時に始める場合と、抗菌薬、療法食での経過観察後や、組織生検の予定がある場合は、確定診断後になる場合とあります。

 

3.確定診断(組織生検)

 

組織生検は必ず必要なものではありません。全身麻酔下で行われるため、年齢や体調などを考慮し判断します。 くわしくは こちら 。
術後、1週間くらいで検査結果がでます。
検査結果によって、薬の追加や変更(ステロイド剤・免疫抑制剤など)や、食事の変更、などが行われます。

 

4.定期検査

 

食事療法や投薬治療を行いながら、定期的に血液検査を行います。
検査の間隔はその子の状態や獣医師の方針によりさまざまですが、2週間~1ヶ月程度の間隔が多いようです。 体調があまりよくない場合はその都度行います。
TPとALB・ 投薬による肝臓への影響(GOT・GPT・ALP・G-GTなど)・食事の影響(クレアチニン・BUN・TG・T-CHOなど)のチェックを行います。
また、療法食の場合はほぼ心配はありませんが、手作り食の場合は必要に応じて、体内のビタミン・カルシウムの状態のチェックも行います。

 

5.減薬

 

TP・ALB値、胃腸症状が安定してきたら、ステロイドや免疫抑制剤を徐々に減らしていきます。
減薬することによってTP・ALB値が不安定になることもあります。
状態をみながら、再度食事の変更を行ったり、減薬のペースを落としたりと、細かい調整が必要となります。あせらずにその子にとっての最善を探して、慎重に減薬を行います。
減薬は、投薬の間隔を変えずに薬の量を減らす方法 と 薬の量を変えずに投薬の間隔をあける方法 などがとられます。

 

6.食事管理と定期検診

 

完治はないので、継続して定期検診、血液検査が必要です。
アレルギーや免疫機能の影響が大きい病気なので、季節やストレスなどの変化があると、体調も変化することがあります。
見た目の体調の変化が無い場合でも、TP・ALB値が急に変化する場合もあります。低下が続くような場合は食事内容の変更や、再度の投薬などの対処が必要になります。
早めに対処してあげられるよう、食欲やうんちの状態などのチェックもしっかり行いましょう。